実話の持つ迫力
「映画を見たからいいや」なんて言わないでください。原作には映画化できなかった色々なエピソードがふんだんに盛り込まれ、映画を見た人でも充分に満足できるはずです。もちろん映画の方も、原作の雰囲気を失わずにとてもうまくエッセンスを抽出している名作ですので有料配信だとしても観る価値はあります。
時は第2次大戦後期、ここドイツ空軍の捕虜収容所に捕虜たちが集められます。彼らは捕虜の自覚なんてさらさらなく、退屈な収容所暮らしの中に刺激を求めて「脱走」を試みるのです。方法は色々ありますが、やはり王道はトンネルです。綿密に計画を練り、慎重に準備を重ね、巧妙に処理していく様子がことこまかに描かれています。ないものは作り、どうしても作れないものは盗み、知らないことは調べ、どうしても知らないことは脱走してまで調べてくる。何もできない者はいなく、誰もが何かをすることができる。「捕虜の任務は、出来る限り脱走して敵国に手を焼かせ、兵力や士気に影響を与えることだ」という名目のもとに、捕虜たちはスポーツでも楽しむように脱走の準備を進めていきます。
原作のもうひとつの特徴は、終戦時や戦後についてもふれていることです。ドイツの敗戦が濃くなり、ソビエト軍が迫ってくるため収容所は閉鎖されます。捕虜たちは他の収容所を移されながらも必死に生き延びようとします。その際にも友軍の方へ常に「脱走」を試みるのです。また、大量の脱走者が出たことに対し、ドイツ軍は脱走者を銃殺するという「見せしめ」のような報復に出ました。その命令は誰が出し、誰が執行したかを追求するところまで原作には書かれています。
まさに「実話」ならではの迫力が伝わってくる本です。多少は重たく感じられる場合は、映画を見て息を抜きましょう。
(ポール・ブリックヒル、ハヤカワNV文庫)
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