2023/11/28

指輪物語

 前人未踏の創造世界

 もともとは息子たちに枕元で語って聞かせるための物語でした。ちょうど神話学や古い民話、伝承といった分野に明るかったトールキン先生はいつしか世界を、そして壮大な叙事詩を創り上げてしまったのです。「中つ国」と呼ばれるこの世界は、まだこの世が人類だけではなかった頃ということなのです。妖精やドワーフ、魔法使いに龍といった空想の世界ではあっても、人間が想像している限り、存在しているという前提で読み進めていきましょう。

 恐るべき力を秘めたひとつの指輪。それは遙かな昔から続く戦いの勝敗を決することにもなるので、指輪の存在を知る者は皆それを探し求めていた...

 そんなある日、のどかなホビット庄で名士であり変人のビルボ・バギンズ氏の誕生パーティが行われることになったところからこの物語は始まります。まあ、ホビットについては物語の最初に必要十二分な解説編がありますからそれを読んでいただくとして、とりあえず飲んだり食べたり騒いだり遊んだり歌ったり楽器を弾いたり踊ったり居眠りをしたりおしゃべりをしたり、お気楽極楽なことが大好きなホビットがどうして「ひとつの指輪」に関わっていくのかにお付き合い下さい。人によっては「冗長で物語全体が整理されていない」とか「固有名詞が多い上に文中用語なども特殊すぎる」と言われますが、もはやこれは叙事詩なのです。すべてを知りたいなら読むしかありません。

 何はともあれ、これだけの世界を創り上げたというのは事実ですし、そう簡単なものではなかったはずです。古いケルトの言葉を元にエルフの言葉を考案し、さらには書き文字まで作ってしまいます。見えないところまで気を使い、徹底して雰囲気を出そうとした作者の努力は評価されてしかるべきです。アメリカでは「ガンダルフを大統領に!」なんていう運動(たぶん半ば冗談、半ば本気だったと思う)があったそうですが、それだけの説得力を持った創造が行われたのは事実です。

 この物語の世界はとても広大です。私は読み進めながら、その世界の広さに心ひかれました。あまりにも広すぎて、半月ほど旅をしても誰にも会うことがない土地が広がっている...狭い日本では、そうお目にかかれない光景です。物語を読み進めながら世界の広さを感じているものの、それは本を読んでいる自分自身の想像力の広がりを再認識しているのかもしれません。長い長い物語の広い広い世界は、読む人の想像力に比例する、といったところでしょうか。
(J・R・R・トールキン,評論社)

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