届かぬ想いを乗せて、遠ざかる気持ち
西暦2061年、人類はハレー彗星に調査隊を送り込み、太陽系の謎と彗星の資源を手中に収めようとした… 各調査隊員は胸中に様々な思惑を巡らせながら、76年後の帰還を夢見ていています。でも、世界中のあちこちから様々な思想や感情を持った人々がうまくやっていけるでしょうか。この物語は、探検隊の冒険小説的なものではなく、どちらかというと人間ドラマ的な展開が多いです。
主人公にあたるのは2人の男性と1人の女性。ハレー彗星調査隊の前に立ちはだかる様々な困難を共に乗り越えつつラブコメをしてます。活発な宇宙飛行士カールと年上で渋めな医師サウル。その2人に愛される数学者ヴァージニア(ただしコンピュータおたく)。相次ぐ非常事態で調査隊全体の存在意義が薄れゆく中、3人は重要な役割を果たしていくのです。
私はしばしば、何かプレッシャーを感じたり、抜け道のない袋小路に入ってしまったような気持ちの時にこの本を読むことがあります。想いが通じないこと、それでも必死に人間らしさを失うまいとする様子をみていると、なんだか元気が出てくるような気がするからなのです。揺れる心、それでいて自分に嘘をついたり、遠ざかる気持ちの中に未練が残っているといった、「人間って不思議な生き物ですね」といいたくなる場面がよく見受けられます。
たまたま同じテーマで小説を書こうとしたということで、作者の2人は意気投合してこの物語が書かれたそうです。「これはどちらが書いたんだろうな」と判るシーンもありますが、あまり作風の違いがはっきりと分かれてはいないので、うまい具合に物語の展開のリズム感が出ていると思います。また人種間の確執、思想や文化の違いから起こる緊張感など、共作だったからこそうまく表現できたのではないでしょうか。
ちょっと厚めの分量ですが「ひたる」には丁度いいと思います。氷づけのハレー彗星を感じるために、夏なら冷房を強めに、冬なら暖房を弱めにしてからどうぞ。
(グレゴリー・ベンフォード&デイビッド・ブリン,ハヤカワSF文庫)
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