はかないだけに、いっそう輝くように
もしあなたが、頭脳明晰になれるとしたら? 知らないことを知り、わからなくていいことまでわかってしまうとしても…
知能障害の治療の実験台として、主人公ゴードンは手術を受けます。別にダマされてではなく、ちゃんと「しじつをうけたい」と本人の希望をかなえるためです。はたして手術後の経過は良好で、同じ手術を受けたねずみのアルジャーノンと比較しても彼の知能は向上しています。でも、誰も予想していないことが起こってくるのです。
ゴードンの知能が上昇するにつれ、彼の中で芽生える意識、感情、欲望、自我の確立などについては誰も対処できません。それは、ゴードン自身で解決しなければならないのです。自分を実験対象とみなされていることに複雑な思いを抱き、初めて感じる異性への憧れに戸惑う彼にとって、人間同士が互いに心を通わせることが複雑であることを痛感します。急激な知能の発達に伴い、心の成長も性急に行わなければならないのです。
現実の世界においても誰もが人間関係の複雑さに頭を痛めていますが、ゴードンの苦悩に比べればどうでしょう。幼い頃から人とふれ合い、色々な感情と接して、成長してきた私たちもまた完全ではないと言われているような気がします。私たちは子供のように無知で純粋でいられる訳はなく、悪あがきのように生きているとしても、素直になることが意外に大切なことではないでしょうか。知能とは別の、精神(こころ)の中にいる自分自身をちょっといたわってあげることも時には必要なのかもしれませんね。
余談ではありますが「レナードの朝」という映画をご存じですか? この映画は実話を元にしているのですが、なんだか「アルジャーノンに花束を」の筋書きに似ているような気がするのです。脚本とか、演出とかで影響を与えているのでしょうか? あ、もちろん「アルジャーノンに花束を」もすでに映画化されています、念のため。
(ダニエル・キイス,早川書房)
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