2023/10/25

夏への扉

 苦難の扉が多いほど、外は明るい

 主人公は生きがいをなくしかけている設計士。自分の会社を奪われ、親友や恋人には裏切られ、すっかり意気消沈しています。
そんな時、主人公の目の前に飛び込んできた文字は「冷凍睡眠保険会社」でした。

 誰もが一度は、絶望して今いる場所から逃げ出してすっかりやり直したいと思うようなことがあるでしょう。時間も場所も気分も新たに、第二の人生を始められたら…

断っておきますが、主人公ダニイはいつも後ろ向きな考え方ではありません。いつも新しいことに挑戦していて、何か失敗してもそれはただの道草で結果はちゃんと待っている、といった楽観的な人です。もちろんもう一人の主人公であるネコのピート君もしかり。いつも正直で大胆な(ネコは元来そういう生き物ですが)ピートがこの本の面白さの半分を支えていると言っていいでしょう。

さて、くだんの「冷凍睡眠保険会社」ですが、これは契約者を冷凍睡眠で眠らせ、その間契約者の資産を運用するといった会社です。主人公ダニイもそれに賭けてみようというわけで、未来へと向かうのですが…

 SFらしさというか、ストーリーの見事さというか、登場人物の魅力というか、いいとこどりな要素が多くて「SFオールタイム・ベスト」に必ず顔を出す名作です。作者のロバート・A・ハインラインは「宇宙の戦士」などでも有名なのですが、こちらの方がだんぜん支持率が高いです。ダニイの職人かたぎなところと、おちゃめで冒険好きな少年のようなところがうまく合わさって親しみやすいのと、ネコのピート君のタフで孤高ながら気品あるネコらしさ(?)がうまく表現されています。それを、今は亡き福島正実氏の名訳でじっくりと味わって下さい。

 猫の好きな人は必読書であり、猫ギライの人は猫嫌い克服のためにどうぞ。
(ロバート・A・ハインライン,ハヤカワSF文庫)
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