15年目の読了、そして「世界」の再発見
私がこのシリーズを初めて手に取ったのは、主人公ポウルと同じく15歳の時でした。
当時、ちょうど映画化実現というニュースをスターログ誌で知った私は、書店の本棚に大きな幅をきかせているこの本に興味をもって読み始めたのです。中学生に読みこなせるものでないことを知らずに。
その広大な背景世界、現実感のある文化様式の記述、SFらしい現実的な登場人物たち、小説らしからぬ用語事典、すべてが私を圧倒したのです… 「こんな本、読んだことない!」
第1部「砂の惑星」を無理矢理読み終え、当時の私は読むのを止めてしまいました。
それから十数年後、通勤時の電車内の読みものとして、ふたたび私は手に取ったのです。当時理解できなかったことが、嘘のように頭に入っていきます。意外なことに、とても硬派だと思っていたこの本が派手なアクションあり、哲学的で格言めいた言い回しや箴言、その一方で濡れ場ありという具合に「大人向け」の本であることに気づいたのです。
人類の遺伝子を永続的に支配しようとする女性結社ベネ・ゲセリット、「思考する」機械を排斥し人間本来の能力を拡大強化した人間コンピュータともいえるメンタート、銀河世界でただひとつ化学合成が不可能な抗老化剤かつ麻薬である香料メランジ、そのメランジを生成する巨大で凶暴な生物「砂虫」サンドウォームetc…SFの小道具も豊富です。
デューンシリーズは全6部(著者死去のため未完)、日本語版は17冊にのぼります。その中につめこまれたあらゆるものが、「世界」を形作っています。私は長い時間をかけて読み終えましたが、それだけに時間の経過も加味された私自身の「世界」の成長も確認できたような気がします。「デューン」の世界に対して抱く感覚は、読む人の世界と比較し反映されているのではないでしょうか。
シリーズ構成は以下の通りです:
第1部「砂の惑星」
第2部「砂漠の救世主」
第3部「砂丘の子供たち」
第4部「砂漠の神皇帝」
第5部「砂漠の異端者」
第6部「砂丘の大聖堂」
第1部・第2部は最初の主人公ポウルによる神話の誕生、第3部・第4部はポウルの子(神皇帝レト)による神話の完成、第5部・第6部は神皇帝崩御後の世界、というような分類ができます。ハーバートは第7部の執筆を始めていたといわれてますが、おそらく出版されることはないでしょう。しかし、ファン心理としては大筋だけでも知りたくてたまりません。
私個人としては「ダンカン編」が書かれたのではないかと勝手に想像しています。だって、あの「老いたカップル」って怪しいではないですか!(一説にはハーバートと奥さんだとも言われていますが、定かではありません)
そして、著者死去で世界が閉じてしまったかと思われたら、息子ブライアン・ハーバートとケヴィン・J・アンダースンの手によってシリーズが書き続けられています。2001年に第1部の前日譚となる「デューンへの道」シリーズが邦訳されました。以後、シリーズが展開されているのですが、邦訳がなかなか出ません。というか、第5部や第6部の再刊もしてほしいと思います。2021年には再映画化は大好評だったので、本屋さんにもラインナップをそろえておいてほしいものです。
私が何か物語を書こうとする時、知らず知らずのうちにハーバートの作風に影響を受けていました。各章の冒頭に引用めいた記述を置いたり、用語事典を作成していたり、人と場面が次々と移り変わったり、登場人物が色々と考えをめぐらせたりというように…まあ、効果があがったかは別としましょう。(^^;)
とっつきにくいのは承知の上だし、放り出してしまう人も多いかとは思います。でも、読み終えた人だけが持つ優越感のようなものがあるところが、何となく「指輪物語」を連想させるのは気のせいでしょうか。
(フランク・ハーバート、ハヤカワSF文庫)
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