2024/03/07

御家人斬九郎

葵のご紋は持ってるけれど

名実ともにハリウッド俳優となった渡辺謙氏のTVドラマを見てもいいのですが、原作も一読の価値があります。江戸時代の「御家人」とは幕府から俸禄の支給がありながらも将軍に会うこともない、食べていくのもギリギリな最下層の武士です。主人公「斬九郎」はアルバイトすなわち「かたてわざ」をしなければ美食家の母を満足させられないとか、無頼な輩のようで義理人情に厚いとか、御家人といえども将軍の遠戚なので家紋は「葵の御紋」だけれども…という数々の細かい設定がなんとも味があります。そして他の登場人物もなかなか個性的です。TVドラマもそういう雰囲気を出そうとして努力しているのもわかります。(まあ、キャストのプライベートな関係は捨て置きましょう…)

 時代劇は筋書きにおいて、ある種のリピートがかかっている感も否めないのですが、「わかりやすい」というのが一番の長所です。どこから、誰から、いつからでも物語を始められます。ご都合な展開で当たり前、現代と違って込み入った事情やハイテクも不要。郷愁を感じさせつつも異世界といっていい江戸時代。根強いファンがいるのも当然です。

「眠狂四郎」などで知られる作者の最後の作品で、続巻がないのが非常に惜しまれます。

(柴田錬三郎,新潮文庫)


0 件のコメント:

コメントを投稿