2024/01/31

パックマン

 血まみれのレバーと左手と

 およそゲーマーなら知らぬ人はいないとも言われるパックマン。20世紀を代表するゲームキャラとして故アンディ・ウォーホールのアート題材に使用された経歴も持っている(*1)くらいですから、その知名度は計り知れません。中心角度を200度以上にとった黄色い扇形というシンプルな姿ながら大食漢で敏捷性に富み、なぜか4匹のモンスターに追っかけまわされる。そんな彼を1本のレバーで操作してできるだけたらふく食べさせてあげればいいのです。

 1本のレバーといえば…

 パックマンが喫茶店のテーブル筐体に設置されていた頃(*2)、小学生の私は家計を助ける(そしてお小遣い)ため夕刊の配達をしていました。その途中で、配達先の喫茶店で1ゲームだけ遊んでいく、ということがしばしばありました。そんなある日のことです。

 その日は調子が良く、自己最高のスコアとなっていました。エキサイトした私はレバーを強く強く握っていいました。ゲームが終わり、いやに左手が汗でぬるぬるしていると思ってみると左手は血まみれでした。当時のテーブル筐体にはあまり人間にはやさしくないつくりだったのでレバー基部の周囲が保護されていなく、レバーを握り締めた左手を傷つけてしまったという訳です。喫茶店のマスターに手当てしてもらいましたが叱られてしまいました。

 今でも、左手にその傷跡が残っています。きっと「おまえは一生ゲーマーなのだ」と烙印を押されてしまったのかもしれません。

*1: かの巨匠が他のゲームにも通じていたかどうか、定かではありませんけど。

*2: 最近はテーブル筐体も珍しくなりました。インベーダーブームの頃は何か1品だけ注文して後はすべてゲームに使われてしまい、喫茶だか喫ゲームなのか判りませんでした。まあ、ゲームの売上げの方がいいからお店の方も手間がかからなかったのでしょうけど。

※「ナムコミュージアムVol.1」はAmazonで注文できます。多数に移植あり。

2024/01/30

シュナの旅

 大切なのは信じること、そして守り抜くこと

 私が本屋で何気なく表紙の少女に目を留めたのは、どこかで見たような面影があったからでした。1984年に、「風の谷のナウシカ」のことをまだ知らない私は宮崎駿氏の名前も当然知りませんでした。でも、手に取ってぱらぱらと中を開いてみると、水彩で描かれたらしい画に引きこまれてしまったのです。そして、この物語にも。

 貧しい小国の王子シュナが決意を胸に旅立ちます。民を飢えから救うために幻の穀物を探しに行くというのです。子供の頃に読んだ古い民話のような筋書きですが、実際にチベットの民話がベースになっているとのこと。でも、作者はちゃんともう少しお話を練り上げてあるのです。シュナは様々な苦難にもくじけません。幻の穀物を手に入れられることを信じ、そして帰ってくるという誓いを守り抜くために。とても辛い目に遭ったとしても、そこには必ず救いの手がさしのべられる…

 宮崎氏の作品の中で、私は一番この物語が好きです。へたに映像化なんかしないで、本のままでいいと思ってます。一度だけ、ラジオドラマ化されましたが、知らない人も多いと思います。

 ちなみに、私は引っ越すときも必ずこの本を持っていきます。ある日、私の弟が電話で「シュナの旅、持ってったの?」と聞いてきました。そう、私の弟もこの本が好きで、読みたくなって実家の私の本棚を漁ったのだそうです。いい話なんだから、買えばいいのにねぇ!

(宮崎駿、徳間書店)

Amazonで注文できます

2024/01/26

SCANNER: Cannon CanoScan600DX

 SCSIボードとの相性(購入前情報)

 以前からスキャナが欲しかった私は色々と調べ、Cannon の CanoScan300、つまりローエンドのモデルのほうを買おうとアキバへ向かいました。さすがにスキャナは値下げ対象にはなりにくく、大型店で購入することに。店員さんに「これ下さい」と、あとは支払いをして持って帰るだけ...

 そこへフロアマネージャらしき人が来て話しかけてきたのです。「判る範囲でよろしいのですが、SCSI ボードのメーカーを教えていただけますか」とのこと。私は首をかしげながらもメーカーと型番を伝えると、マネージャ氏はカタログを調べ始めたのです。

 「お客さん、申し訳ありませんがその SCSI ボードで動作不具合があるようです」とのこと。どうやらSCSI 接続のスキャナは SCSI ボードの選り好みが激しいようなのです。その横では持ち帰り準備OKのスキャナが... 親切なマネージャ氏のおかげで余計なトラブルに遭わずにすみました。とはいえ、どうしても Cannon のスキャナが欲しかったので、後日さらにお金を積んで CanoScan600DX を買ったという次第です。

 SCSI 接続のスキャナを買う際には、SCSI ボードとの相性を考慮するようにしましょう。

2024/01/25

ナバロン

 正体不明のゲームなれど

 このゲームについての情報は皆無といっていいほどありません。ゲーム内容どころかゲーム画面写真さえも見当たらないぐらいなのです。ゲーム名の由来はおそらくアリステア・マクリーン原作「ナバロンの要塞」あたり(*1)でしょう。と、すればきっとシューティングゲームと推測されます。

「見たことも遊んだこともないゲームに書くことがあるのか」と思われる向きも多いことでしょう。でもナバロンはおそらくナムコ初の地上戦闘シューティングゲームということで、非常に個性的なゲームだったのではないでしょうか。その個性ゆえに、当時のゲーマーに受け入れられてもらえなかっただけかもしれません。そう推測する理由は、後のナムコの地上戦闘シューティングゲームのほとんど(*2)(タンクバタリアン/フォース、グロブダ、ブレイザー、アサルト、サイバースレッド/コマンド、TOKYO WARS…)は必ずといっていいほど特殊なゲーム性を持っているからです。シブいゲーム構成、かつシビアな難易度。「ナムコの戦車系ゲームはストイックなものが多い」といわれるルーツはナバロンにあるかもしれないのです! …いい線いってると思うのだけど、どうでしょう?

 今かりに遊べたとしても「なぁんだ、こんなものか」というような内容かもしれません。もしもリメイクされる/されていたとしてもたいした話題性もないでしょう。でも、単に古いというだけでなく一切の情報がないところから思いを馳せてみるというのも悪くはないのではないでしょう? 勝手な想像が、ひょっとしたら新たな創造に結びつくかもしれないのだし。

*1: 他にも続編「ナバロンの嵐」、そして両者とも映画化されてます

*2: ごめんなさい、「タンクマニア」だけは遊んでません。だから断言できません

任天堂Switchの「アーケードアーカイブス」で配信されています


2024/01/24

とりかえばや物語

 平安時代の奇本、現代に通ず

 古典の参考書などに、まれにこの物語について言及されています。女として育てられた若君と、男として育てられた姫。二人のこの兄妹はそれぞれ宮廷に出入りするようになるが、その秘密はいつばれるかと両親は気が気でならない。このふたりの運命やいかに…

「先天的性障害」という言葉があります。身体的な性別と精神的な性が矛盾している、という意味だそうです。ゲイとかニューハーフだとか性転換者といった、性別の認識が変わりつつある現代ではなく、平安時代の貴族社会が舞台というのがとても興味深いと思います。それでも、根底にあるのは人間の心です。昔も今も、誰もが人間関係に悩んでいるということです。「出家してしまいたい(いっそこの状況から逃避したい)、でもそれはできない」と考えあぐねるのです。

 読んでいくうちに感じたのは、子を想う親の気持ちがとても強調されているということです。二人の兄妹をめぐる物語の中でたびたび、両親の胸中おだやかならざる場面が描かれているのです。宮中の一大スキャンダルともなりかねない我が子のことを憂うこともなく、またそれによって自分の地位を案じるわけでもなく、ひたすら子を想う親の気持ちの強さは変わらないのだなと思います。

 現代人から見ればちょっとヘンな平安時代の価値観に気が散らなければ、案外すんなりと読み進めていけるでしょう。平安時代の用語も学生時代に古典の教科書に出ていたのを思い出せればそこそこ充分です。また、男女関係についての描写はそう露骨ではないものの、満員電車の人混みの中では読まない方が賢明です(経験者は語る)。

(作者不明,中村真一郎訳,ちくま文庫)

ちくま文庫版はAmazonで古書のみの注文となります

2024/01/23

デフォルトからの脱出

  後輩S君の PC-9801BX は発売当時のまま、何の拡張もしないで使ってきた状態でした。ずっと使ってきたので愛着があり、手放せそうにないとのこと。今どき聞かない、いい話じゃないですか。そこへ、S君は「こいつでも Windows95 動かせます?」と聞いてきたのです。

 「無理だ」と言えば話は早いのですが、一応以下の通り説明しました。

  • ハードディスク:130MB → 最低でも 300MB は必要
  • メモリ:1.6MB → 少なくとも 8MB は要る(ただし PC9801BX は 14.6MB までしか拡張できない)
  • CPU:i486SX(20MHz) → 動くことは動くが泣きたくなるほど遅いはず
  • 解像度:640x400x16色 → VGA ボードを追加して 640x480x256色 は必要
  • サウンドボード:なし → ゲームがしたいんならあった方がいいかな?

 悪いことは言わないから、買い換えるよう勧めたのですが「愛着があるから...」とのこと。まあ、せめて Windows 3.1 ぐらいは動かせるようにしようということで、アキバへ出かけることになりました。

 さすがに旧国民機対応の周辺機器は少ない上、割高なものが多いので中古ショップへ自然と足が向いてしまいます。ですが、保証のないジャンク品やマニュアルがなかったりドライバが同梱されてないなど、慎重にならなければなりません。

 …やはり、ネックは彼の 9801BX のハードウェア仕様が古いことでしょう。メモリも独自のバスを持っているようですし、内蔵用ハードディスクも接続できるかどうか定かではない。「対応機種:PC-9801BX用」と表示されていないものは片っ端から見捨てて、安全かつ値段の安いものを探したのです。また、動作できる機種かどうか、どう接続するかなどは大手のショップでマニュアルを見せてもらい情報収集しました。

  • ハードディスク:520MB 外付け、SCSI ボード同梱
  • メモリ:ちゃんと9801BX専用、8MB
  • サウンドボード:FM 音源 + MIDI 端子付き
  • CD-ROM ドライブ:4倍速外付け

 残された問題はグラフィックアクセラレータですが、ディスプレイまで買い換えることになる上に、S君の予算の都合もあるので見送ることになりました。それでも、彼は満足したようです。その日のうちに接続も支障なく終わり、きちんと動作していると連絡もありました。

 しかし... 後日電話があったのです。「買ったソフトが動かないっスよ~、何だかグラフィックなんとかが必要だとかムカツくメッセージが出てくるスよ~」ありゃりゃ、アクセラレータはあきらめたはずじゃ…?

 なんだか私は「これじゃどうしようもないよ~」と途方に暮れるドラえもんの気持ちが判ったような気がしてなりませんでした…

2024/01/22

Rogue

 いぶし銀の魅力

 怪物の巣くう迷宮に挑む冒険者…という設定はオーソドックスではありますが、古典的なRPGでは共通の設定でもあります。とはいえ、何度も遊ぶ訳にはいきません(一度ひっかかった罠に、二度もひっかかる人はそういないでしょう?)。

 「ローグ」は、あらゆる要素をランダムにすることでマンネリを回避しています。入るたびに構造の違う迷宮、宝物や怪物の配置も違えば、アイテムの名称まで変わってしまうのです。さらに、ゲーム難度もランダムです。ひどい時にはゲーム開始後1分もしないうちにゲームオーバーなんてことも。非情なまでのゲームバランスについ「もう一度!」と意地になって続けてしまうのです。

 ゲーム画面は至って地味です。全部文字だけで表示され、美麗なグラフィックは一枚もありません。そう、迷宮の壁や廊下や床に階段、怪物やアイテムや自分自身でさえ「@」とか「$」というように1バイトキャラクタ文字なのです。その一文字ごとに怪物を想像し、アイテムを見つけ、冒険している気分に浸る…ことになるのです。

    ゲーム画面の例
    -------------------
    |.................|           --------
    |.*....B..........+########   |......|
    |............@....|       #   |....%.|
    -------+-----------       ####+......|
           #                      --------
    

 コマンドも多彩です。「移動」「調べる」といった基本のコマンドはもちろん「装備」が武器、防具、指輪(マジックアイテム)ごとに分かれていて、「(薬を)飲む」「(食料を)食べる」というように身体のコンディション調整のコマンドもあります。攻撃のコマンドも、接近戦(移動コマンドと同じ)、「(矢を)射る」、「投げる」「(魔法の杖を)使う」などがあります。私はよく矢を「射る」のではなく「投げる」を使ったりします。時には鎧を「投げ」たり薬を「投げ」て攻撃することもできるのです。

 オリジナル「Rogue」は UNIX 版で、MS-DOS 上でも遊びたいという要望から「Rogue-Clone」が作成されました。こうして普及していくにつれ、他の同様なゲームに大きく影響を与えました。Rogueの発展版といえる「NetHack」を始め、PCゲーム「Diablo」や「Elder Blaze」、家庭用ゲーム「トルネコの冒険」「風来のシレン」「チョコボの不思議なダンジョン」「ポポローグ」などもそうです。

Windowsでも遊べる「Rogue Clone II for Win32 Version」はこちら
攻略ページはこちらです(ネタバレ注意!)。

Macintoshで遊べる「jRogue」はこちらです。

こちらでBNN刊行の「ローグ ハンドブック」PDF版が公開されています。

2024/01/10

猫弾きのオルオラネ

 切ないならば、いっそ心を解き放て

 学生時代の終わり、私が非常に辛い気持ちでいた時…想いを寄せながらも、それが決して届かなかった時のことです。すっかり落ち込んでいた私に、友人からこの本をすすめられました。この本は連作の短編集で、共通しているのはオルオラネ爺さんが出てくるということだけ。「居る、居らね」とはなんとも人を食ったネーミングです。そして一方で、精神的にダメージを受けた人がいる。悲しさ、空しさ、やるせなさ…切なくてやり切れないとしても、その気持ちは強い力を秘めている。だから、それを閉じこめたままにしないで、心を開いて解き放ってしまおうという筋書きです。

 他にも、不思議なものが出てきます。「夢雪蝶」「天竺風鈴草」「こころほし てんとう虫」などなど、詳しくは書きませんがどれもあなたを不思議な気持ちにさせると思います。虫とか花とか他愛もなさそうなものばかりですが、その中にも立派な「力」があるとでもいいましょうか。日頃は当たり前すぎて気にも留めないようなことにも気づく瞬間があり、その瞬間のひとつひとつを大切にできないものか…

 物語の中で、オルオラネ爺さんは猫を弾きます。爺さんが猫の身体を撫で回すと、猫たちが唄い始めます。その声は、染み込むように心の中に響いていくというのです。登場人物の飛び出ている感情を穏やかに引っ込めていく、というその唄を聞いてみたく思いますが、あまり聞いてしまう境遇にもなりたくないですね。(^^;)

(夢枕獏,ハヤカワJA文庫)

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