2023/12/07

「どくとるマンボウ」シリーズ

 独特の語り口と軽妙さ、そしてペーソス

 ある日、一人の少年が一冊の本を手渡されました。

「どくとるマンボウ昆虫記」という奇妙なタイトルは彼の好奇心を刺激し、本が好きだったこともあってか少年はすぐに本を読み始めたのです。「昆虫記」といえばファーブル、という常識はどこへやら、ユーモア混じりの文体でおもしろおかしく書かれたこの本で、少年は初めてTVやマンガじゃなくても笑える、ということを発見したのです。

 少年とは、小学5年生当時の私です。父がくれたこの本を学校まで持っていってまで、熱心に読んでいました。当時の友人たちは私がマンガでもない本を読んで笑っているのをとても変に思っていたことでしょう。まあ、本当は小学5年生向きの本ではないですが、少なくとも私の人生にかなり影響を及ぼしているのは間違いありません。

 このシリーズは北杜夫氏のエッセイのことです。医師であるため「どくとる(Doctor)」、おっとりとした性格の「マンボウ」という意味を組み合わせたと思うのですが、未だに由来ははっきりとしません。このシリーズは非常に多く、時に「マンボウ」が書名に付かない場合もありますが、別にこだわるつもりもないのでしょう。純文学も執筆しているのですが、一般には「マンボウ」シリーズの方が知られています。

 文体は軽快でリズム感があり読みやすいと思います。この本の面白さを伝えたくて、本に書かれた表現を使って話しているうちにおしゃべりなくせが付いてしまいました。でも、話はそう下手ではないと思うし、作文や国語の試験では苦労したことがありませんでした。本を集める楽しみを知ったり、シリーズ中でもしばしば語られる山の話が、私をアウトドア活動に興味を持つきっかけとなったりしています。まさに、私のルーツといっても過言ではないでしょう。

(北杜夫,中公文庫ほか)

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