2024/08/26

ライ麦畑でつかまえて

そういうつもりじゃなかったんだ

 知らぬ間に人を傷つけてしまったり、心と裏腹に違うことを言ってしまう。
誰にでもあるかと思います。強がっているわけでもなく、他人が怖いわけでもないのに。

 主人公は多感な年ごろで、立派な家のお坊ちゃんで、いい学校にも通っている。
成績はまあまあ、友人も多少はいる。助けてくれる知人もいる。でも、でも…
何かが、彼を動かしているような。それとも、彼が何かに抗っているのか。

 この本を紹介されたのは中学3年生の時です。英語の先生が、最後の授業の時に「ちょっと早いかもしれないけど」と前置きしてこの本について語っていました。その時は一瞬「読んでみようかな」と思いましたが、なんとなく後回しにしてしまったのです。きっと先生は、多感な10代の頃に読んで欲しかったのでしょうけど。

 10代の自分はそんなにひねくれた性格でいるつもりはなかったですが、確かに気持ちとは違って別のことをしようとする衝動に駆られていました。高圧的な大人に反抗し、わざと意にそぐわない行動をとって大人たちを怒らせていました。自分の中にある自分だけの正義感があって、それに従うことしかできない、そんな性格でした。

 そして20代、この本を手に取りましたが読みはしませんでした。少し読んでみたのですが、なんだか主人公に共感できるところが少なかったのかもしれません。今考えてみたら、もうその時には読む時期を逸してしまっていたのかもしれません。でも、自分の中にある例の自分だけの正義感がもたらす衝動は、しばしば人間関係にヒビを入れることがありました。
…そういうつもりじゃなかったんだ、と。

 本棚に置きっぱなしになっていたこの本をやっと読んだのは50代になってからです。
あらためて主人公の気持ちや衝動や行動に触れながらも、自分の中にある「自分だけの正義感」の存在を知り、そしてこの本を読むのが遅かったと痛感しました。

でも、読んでいたとしてもあの頃の自分なら「なんだ、この本」と言いそうですが。

(J・D・サリンジャー、白水社)
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